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ペティグリード ジュブナイルズ

5章 林間学校に行こう!

 





  次の日は、待ちに待った林間学校初日である。
 まず、生徒一同はいつもどおりに学校に集合する。
 その後、教室で担任の宮下先生と合流。学校から4km離れたところにある
 宿泊施設、黒岩温泉を目指す。
 
 「おーう! アスカ! セアン! 鳶丸! 楽しみだな、黒岩温泉って、どういうところなんだ?
 すっげーでかいとこなのか?」
 
 「ダイスくん、大きくないよ、それどころかキミが想像しているより遥かに小さいよ」
 
  ふむ、情報によると黒岩温泉というところは、ひなびた温泉宿という言い方がピッタリ合う
 ところで、宿泊できる人数は最大で40人程度らしい。
 それを、この夏休みの林間学校の期間だけ、宿泊施設として格安で提供してもらっているのだ
 そうな。
 なお、生徒1人一泊1000円らしい。施設を運営している老夫婦は、この林間学校を楽しみに
 しているそうで、子供たちが来るのを心待ちにしているとのことである。
 また、泊まれる人数に限界があるので、林間学校はクラスごとに1日ずつずらして行われる。
 今日は我らが4年1組が泊まり、明日の朝には帰る。
 そしてその日の昼過ぎには、4年2組の一行が到着する予定だそうだ。
 
 
 
 
  途中、コースは山道になる。
 ちょっとしたハイキングだ。距離は2kmほど、大人の足なら40分ほどだろうか。
 子供たちなら、もう少しかかるだろう。
 山道をはしゃぎまわって、走り出す子が幾人か出る。
 案の定、すぐ疲れて座り込む。
  山道では小股で歩き、ゆっくりでもいいからペースを乱さない。これが基本だ。
 って、そんなことを心の中でつぶやいても何の意味もない。
 見ると、走り回って疲れてしまったクラスメイトたちの中に、並木少年が混ざっていた。
 周りの子と同じように肩でぜーぜーと呼吸をしている。運動能力はそれほど高くないのだろうか。
 
  いくらか行った所で小休止し、少し水を飲むなりする。
 気の早い男子の中には、おやつを広げて食べ始めている者もいる。
 先生が注意すると、あわててお菓子をリュックに引っ込めるのだが、
 そういう手合いに限って、後からいろいろと文句を言いだすのだ。
 
 「なあ、鳶丸、オレ、のどがかわいた」
 
  並木少年は、さっきお菓子を食べていた子たちの1人だ。
 味が濃そうなスナック菓子をバリバリと噛み砕いていたのを覚えている。
 ああいう菓子は結構な量の塩分を含んでいる。
 そういった物を食べると、体内の塩分濃度が高くなり、のどの渇きのような
 症状を訴えだすことが多い。
 
 「ダイスくん、キミは自分の水を持っていたじゃないか、それを飲みなよ」
 
  文楽55号は水を飲む必要が無いので、本当なら飲み物をあげてもいいのだが、
 こういうやり取りの方が子供らしいかと考え、あえて少し意地悪を言ってみた。
 
 「いや、オレさ、持ってきたジュースもうあらかた飲んじゃったんだよね」
 
 「どんなジュースを持ってきたのさ?」
 
 「コーヒー牛乳」
 
  それはなんというか・・・甘いから疲労を取るには有効かもしれないが、
 渇きを抑えるにはただの水か、別の選択肢ならスポーツドリンクが適当だろう。
  そうだな、鳶丸は水を必要としないし、ここは友情を取るか。
 そう思い、私が鳶丸のリュックの水筒に手を伸ばしたときだった。
 その手をガッと握る白い手が出てきた。
 佐東少年である。
 
 「ダイスくん! 鳶丸くんの水を取っちゃダメだよ。鳶丸くんも、ダイスくんを甘やかしたら
 ダメだよ」
 
 「ひどいよダイスくん、ボクのアクアカミュー、半分も飲んじゃって」
 
  野々村少年は半泣きである。
 アクアカミューとは何だったか、確かスポーツドリンクの一種だったように覚えている。
 ドリンクの元が粉状になって、袋に入って売っているヤツだ。
 
 「いや、それはさ、悪かったよアスカ。のどかわいて、ホントつらいんだって。
 セアンもさ、別にいいじゃねぇか。鳶丸がくれるって言うんだし」
 
  確かに、あんな塩分がきつそうなお菓子を食べたのでは、
 のどの渇きもひとしおだろう。
 
 「まあまあ、仕方ないよ、セアンくん、アスカくん。でも少しだけにしてよ? ダイスくん」
 
 「おお、友よ! オレはここに熱い友情を感じたぜ! まったくセアンのヤツは冷てーよな。
 昔からの親友がのどの渇きを訴えてるっていうのに」
 
 「ふん、僕の忠告を聞かないダイスくんがいけないんだよ。あのお菓子、塩辛三郎は塩分が
 しっかり効いてるから、今日持っていくのは良くないってアレほど言ったじゃないか」
 
  ふむ、あの見るからに味がくどそうなスナックは塩辛三郎というのか。
 
 「やれやれ、いいじゃねぇか。食いたい物を食うのがお菓子だぜ。
 おっ、サンキュ。鳶丸。ゴクゴクゴク・・・」
 
  結構飲んでいやがる。
 
 「はい、どうもどうも」
 
  返された水筒を見てみると、中身が3分の2になっていた。
 律儀に約束は守りつつも、自分の欲求も出来る限り満たしたかったというところだろう。
 
 
  そんな山道を登り始めて1時間は過ぎただろうか。
 森の木々が急に途切れ、アスファルトで舗装された大きな空間に出た。
 見るときれいに整備されたグラウンドほどの広さの土地があり、
 その真ん中にぽつんと古びた宿がある。
 
 「はい、みんな良くここまで頑張りました! おつかれさまー」
 
  宮下先生が生徒の方を振り返り、目的地への到着を告げる。
 生徒からはやったー、だの、疲れたーだのといった歓声が上がる。
 
 「はい、それじゃあみんなはここにいつもの体育の時みたいに座って待っていてください。
 先生はちょっと行って、宿の人を呼んできますから」
 
  そう言うと、宮下先生は宿の方を向く。
 すると、それと同じタイミングで宿の玄関から1人のおばあさんが出てきた。
 長い白髪の女性だ、足腰の方はしっかりしているらしく、しゃんしゃんとして歩いてくる。
 
 「先生さんかい? 市立第2小学校の4年1組のみんな?」
 
 「はい、申し訳ありません、予定より少々遅れました。改めて、私が担任の宮下です。
 それでここに座っているのがクラスのみんなです。
 都合のつかなかった何人かの子は来れていませんけど」
 
 「はいどうも、よくいらっしゃいましたみなさん。
 4年1組のみんなだね? 山道は大変だったろう。よく来たね。
 わたしはここの女将の朝倉です。短い間だけど、よろしくねみんな」
 
  はーい。と、全員で元気に返事をする。
 
 「はいはい、まだ元気なようだね。
 それじゃあ宿の方にどうぞ。すみませんが先生さん、子供たちをまとめるの、頼みますよ」
 
 
 
 
 
  宿に入ると、そこは古臭い木の香りでいっぱいだった。
 玄関の下駄箱に靴を入れ、全員でお邪魔しマース、こんにちわーと連呼しながら奥に進む。
 途中、廊下の暖簾の向こうから、カツオ出汁のいい香りがしてきた。
 少し中を覗き込むと、そこでは近所のおばちゃんたちと思われる人々が、大鍋相手に奮戦している。
 目が合うと、こっちに向かってニコニコ笑っていた。
 
 「みんなは食堂に入って、各自座って待っていてね」
 
  先生はクラスの全員を食堂へ連れて行き、そこにみんなを置いておく。
 宿の人といくらか話があるのだろう、別の部屋へ行ってしまった。
 
 「うわっ、すげー古いぞここ」
 
  がたつく木のイスを揺すりながら、並木少年が天井を見て呟く。
 
 「ほとんど木造の建物だね。柱とか黒光りしてるよ、僕、こういうのあんまり見たことないよ」
 
  佐東少年は感心して周囲を見渡している。
 
 「な、なんか、お化けでも出そうだねぇ、あはは」
 
  野々村少年は辺りを注意深く観察している。
 なんでこう怖がりな人は、自分から怖い想像をしてしまうのだろう。
 
 「そうだよー?」
 
  そこでぬっとおばちゃんが出てきた。いつのまにか厨房にいたはずの人が食堂に来ている。
 白い割烹着を着た、体格のいい中年女性だ。
 
 「ひゃぴっ」
 
  野々村少年が変な悲鳴を上げる。
 
 「あらあらボウヤごめんね。あはは、怖がらせるつもりは無かったんだけどね。
 でもねぇ、お化けが出るって話はあるんだよ。いやいや、死んだ人間の霊とかじゃあない。
 妖怪ってやつさ。ホントホント! ウソじゃないよ。見たって言う人、結構いるし。
 妖怪タヌキが人を化かすのだと、そう言っている人は確かにいるよ。あたしは見たことないけどね」
 
  タヌキ? もしも人を化かそうとするタヌキがいるのなら会ってみたいなあ。
 恐ろしい怪物という感じもしないし。
 
 「あひゃひゃひゃ!」
 
  並木少年が変な笑い声を上げる。
 
 「タヌキか、そりゃいいや! おい、セアン、アスカ、鳶丸! 後で自由時間があっただろ?
 ちょっと森の中に行って、一緒に探してこようぜ!」
 
 「はーい、それはいいから、今は先生の方に注目ー」
 
  先生が宿の人との話を終え、帰ってきた。
 食堂にいる全員が先生の方を向く。
 
 「これからの予定を説明するわよー。
 まず、各自、自分たちに割り当てられた部屋に移動してください。
 荷物を置いたら一旦外に集合すること、集合するのはさっきの場所です。
 その後は、みんなそれぞれ時間まで好きなことをして遊んでいてね。
 でも、危ないところへ行ったりしてはダメだからねー。
 はい、それでは行動しましょう」
 
 
  クラスメイト全員が動き、自分たちの部屋へ移動。
 部屋の扉には出席番号が書かれた紙があったので、迷うことなく到着する。
 野々村くん、丹羽くん、前田くん、宮部くん、脇坂くん、そして私、森下鳶丸だ。
 それぞれの荷物を部屋の隅に適当に置く。
 そして外に出る。
 
  外に出たら一旦集合し、体育座りで待機。
 先生が並んだ皆の前に立ち
 
 「これから自由に遊んでください、宿の人の迷惑にならないように気をつけてね」
 
  との先生の号令である。
 あとは風呂の時間までなにをしていてもいいらしい。
 宿の裏手には散策道路があるので、そこを冒険してもいいし、近くには小さな川があるから
 川遊びもありだ。
 虫取りをするのもいいだろう。宿の旦那さん私製の虫取り網が貸し出されるらしい。
 虫取りチームは、旦那さん直々のレクチャーを受けられるのだそうだ。
 他には加賀瀬さんがいる女子のグループが写真撮影をすると言っている。
 親からデジタルカメラを借りてきているらしい、それで宿周辺の風景写真を撮るのだそうだ。
 
 
  私は並木少年に呼ばれ、散策路の探索に行くことになった。
 メンバーはいつもの4人、ダイス、セアン、アスカ、そして鳶丸である。
 ダイスはどうしても化けタヌキを捕まえるのだと息巻いている。
 
 「へっへっへっ、化けタヌキを捕まえたらどうしたもんかな」
 
  獲らぬ化けタヌキの皮算用といったところか。
 散策路はそれなりに整備されている。不規則な石畳がどこまでも続いている。
 周辺は薄暗く、ときおり、どこからか鳥の声が聞こえるぐらいである。
 
 「もう少し行ったら沼があるらしいよ? そこの近くには小さな洞窟があるんだって、
 入り口の看板に書いてあった」
 
  こういう解説をするのは佐東少年だ。
 
 「洞窟? そこにタヌキがいるのか?」
 
  並木少年はタヌキのことしか頭に無いらしい。
 そんな道中を20分は続けただろうか、目の前の森が突然途切れ、そこから大きな沼が見えてきた。
 沼の岸に看板が立っているのが見える、ここはひょうたん沼というらしい。
 沼は結構大きいようだ。対岸まで50mはあるだろうか。
 端がどこまであるのかよくわからない。ぐねぐねと入り組んだ形らしく、木立に隠れて見えない
 ところも多い。
 
 「洞窟はどこだ?」
 
  並木少年がキョロキョロと辺りを見渡すが、洞窟らしきものは見当たらなかった。
 沼の端はところどころ崖になっているので、どこかに洞窟の1つぐらいはありそうである。
 そこで、我々が来た道からではなく、反対の道から女子の声がした。
 
 「あー、男子がいるー」
 
  我々より先に道を行ったグループはいなかったように思われるので、これはおそらく我々から見て
 出口の方から入ってきたものであるらしい。
 加賀瀬さんらのグループだ。デジタルカメラを構えて、こっちを見ている。
 
 「写真撮りたいから、邪魔しないでよね、並木」
 
 「どうしてオレだけに注意するんだよ! セアンもアスカも鳶丸もいるのに!」
 
 「セアンくんは子供じみたイタズラなんて絶対しないし、アスカちゃんはあたしたちの味方だし、
 鳶丸くんは大人みたいに落ち着いた子だし、ほら、あんたらの中でバカなことしでかすの
 アンタしかいないじゃん」
 
 「うわ、ひでぇ」
 
  並木少年が何か反論しようとしたが、それを野々村少年がクイクイと抑えた。
 
 「ま、まあまあ、それより海ちゃんたち、写真いっぱい撮れた?」
 
 「ええ、順調よ。蝶や鳥も結構撮ったんだから」
 
  そこで別の女子が余計な一言を付け加える。
 
 「海ったら、最初はデジカメの電源入れないでシャッター押してから、最初の方は
 撮れてなかったけどね」
 
 「それを言わないでよ! まあいいわ、それよりさアンタたち、ちょっといい? 
 この沼のどこかに洞窟があるって聞いたんだけど本当? それってどこにあるの? 見た限りじゃ
 見当たらないけど」
 
  それに佐東少年が答えた。
 
 「洞窟はあるみたい。でも、僕らも見つけられていないんだ。もしかしたら見渡すことができない
 奥の入り組んだところかもしれないね」
 
 「ふむ、それじゃあどうしたものかしらね。沼の岸辺は行けそうだけど、ぐるっと回ると相当時間
 がかかりそうね」
 
  沼を一周するのはかなり時間がかかりそうだ。
 加賀瀬さんらは洞窟を探すのを諦めたらしい。
 
 
  その時だった。鳶丸が、突然膝をついた。
 文楽55号が倒れこんだのだ。
 なんだ? 私の視界が突然揺れた。
 モニターいっぱいの地面が目の前に広がる。
 ダメージは軽症だ。もともと鳶丸は不測の事態で倒れ込んだりした時のために、
 瞬間的に手やひじで自分を自動的に庇う姿勢を取るようになっている。
 今回もその機能は働いたようで事なきを得たが、それにしてもこれはいったいなんだ。
 一瞬だが、鳶丸の制御が不能になったような感じがした。
  並木少年が鳶丸に駆け寄る。
 
 「大丈夫か?! 鳶丸?」
 
  佐東少年も駆け寄ってきて、鳶丸の手をそっと取り様子を診ている。
 
 「しっかりして、ケガは無い?」
 
  体を庇うためとはいえ、思いっきり両手をついてしまったから、
 手の皮を擦り剥いてしまったのではないかと考えているのだろう。
 
 「あわわ、どうしたの? 疲れちゃった?」
 
  そして野々村少年は、うろたえるだけである。
 しかし、3人が3人とも心配してくれているようだ。
 
 「う、うん、どうしたのかな? 足がもつれたみたいだ。
 痛いところはないよ、平気平気」
 
  私は鳶丸を立ち上がらせ、仔細を確認する。
 文楽55号に異常は無い。
 しかし、どうしたわけか3人は鳶丸をずいぶん心配しているようだ。
 特に佐東少年など、鳶丸のケガの状態を詳細に確認している。
 
 「傷があるとそこから破傷風菌とかが入るかもしれない、傷は無い?」
 
  私は鳶丸の状態をモニターの一覧で確認する。
 手の平の損傷はほとんどない。
 
 「痛くないよ、へっちゃらだって、気にしすぎだよ」
 
 「そうかな。びっくりしたよ、突然体が崩れるみたいに倒れこむんだから、
 鳶丸くん、キミ、なにかの持病のようなものは持ってない?」
 
 「ないない」
 
  佐東少年はずいぶん心配性なようだ。
 子供が転ぶことぐらい、よくあることだろうに。
 それに意外だったのが、並木、野々村両少年も心配そうにしていることである。
 野々村少年は気が弱そうだからともかくとして、並木少年など「トロくせーな、鳶丸!」ぐらい
 言うかと思ったのだが、そういうことはなく、それどころか純粋に鳶丸のことを心配している
 ようだ。
 
 「とにかく、宿に戻ろうか、ねぇダイスくん、アスカくん」
 
  2人にも異存は無いようだ。
 この後、来た道を引き返すこと30分、私たちは宿の建物に戻ったのだった。



  私たちが宿に戻ると、みんながそれぞれ思い思いの遊びをしているのが見えた。
 何人かの男子のグループは川遊びをしてきたらしい。小さなカニを何匹か獲ったとおおはしゃぎだ。
 女子グループの1つでは、虫取りをしていたらしい。かなり大きな蝶を何匹か捕獲した様子である。
 あとで標本にするのだそうだ、なかなかアクティブである。
 
  宿の前では加賀瀬さんらのグループが撮った写真を検分しているようだ。
 デジタルカメラを持ってきているメンバーは4人ほどいるらしく、その人たちを中心とした輪に
 なっている。
 
 「おうおう加賀瀬ー! 写真撮れたかー」
 
  並木少年が元気に話しかける。
 輪にはすんなりと入っていった。
 それに連れられ、こちら残りの3人も、女子の輪におそるおそる近づく。
  輪の中心では、加賀瀬さんらがデジタルカメラをいじっている様子であった。
 しかし何か様子が変だ。デジタルカメラの調子が悪いらしい。
 
 「おっかしーなー? 確かにあのリスのところで電源入ってないのわかって、電源入れたはず
 なのに、どうしたわけか全然写真が入ってない」
 
  加賀瀬さんはかなりがっかりしている様子だ。
 ため息交じりで意気消沈している。
 それに、他の女子のカメラも、似たり寄ったりの状態らしい。
 
 「別に海のせいじゃないと思うよ、どうしてかわかんないけど、みんなのデジカメも
 ピンボケだったり、それどころか記録がほとんどなかったりするし」
 
 「壊れているのではないみたい、ここでは普通に使えるし・・・」
 
  これは一体なんだろうか?
 そういえば私の鳶丸も刹那の時間だが、制御を失った瞬間があった。 
 エレクトロニクスを多用している機械に不調が見られるとなると、
 何か強力な電波か何かによる妨害でも起こっているのだろうか。
 しかしなぜこんなところに?
 
  どうしものかと考えているところだった。
 鳶丸の皮膚センサーが水の存在を告げる。
 鳶丸の体のあちこちがポツポツと濡れ始める。
 雨が降ってきたのだ。
 
 「みんなー、宿の部屋に入りなさーい」
 
  宿から宮下先生が出てきて、生徒たちを建物に誘導する。
 私も子供たちと共に、鳶丸を建物内に避難させることにした。
 
 

 
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