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マンハンター コマユバチの城

序文


 


 ハチの仲間には独特の進化を遂げたものも多く、その中でも
コマユバチの仲間は変わった生態を持つことで知られている。

 

 時期になっても幼虫のままでいて、サナギにならないイモムシを見たことはあるだろうか?
このようなイモムシの中にはコマユバチが寄生しているかもしれない。
コマユバチは植物の葉を食い荒らすイモムシを見つけ、それに卵を産みつける。
卵はイモムシの体内で孵化し幼虫となり、イモムシの中で栄養を奪いつつ育っていく。
 
 しかし、ここで問題が起こる。

 イモムシが蛹になると、もう栄養を奪えなくなるので、コマユバチは生活が成り立たなくなる。
そこでコマユバチはイモムシのホルモンバランスを崩して、蛹にならないよう、いつまでもイモムシ
のままでいるように仕向けるのである。

 時期になったらコマユバチはイモムシの体外に這い出て、そこで蛹を作る。
1体のイモムシに大量の蛹が出ることも珍しくない。
イモムシはコマユバチの苗床となって死に、蛹から新しいコマユバチたちが生まれてくるのである。

 

 それにしても、コマユバチの生態には、一種のアンビバレンツが存在しているように感じられる。
寄生する相手を殺してしまい、その上で自分たちの目的を達成しようとしても、自然界ではあまり
うまくいかないのではないかと思えるのだが。

 イモムシを殺すことなく、自分たちだけ羽化して、イモムシは蝶にしておけば、次世代のイモムシ
も増えるのだし、どうしてコマユバチはこのような生態を持ってしまったのだろうか?

 植物や、それを食料にしている人間にとってはコマユバチは益虫だと言えるが、このハチにとって
はそれはどんな価値を持っているのだろうか。







 詩

 題 コマユバチ

 ゆりかごの

 城を失いさまようは
 
 人の姿かハチの身か

 人の身なれば生きられようが

 コマユバチでは生きられぬ


 






 マンハンター ~コマユバチの城~





 
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